不動産の取引をしていると、物件を購入した際の価格よりも売却価格が低くなり、譲渡損失が発生してしまうことは少なくありません。
譲渡損失は、売却した年の所得よりも金額が大きい場合、住民税や所得税と相殺できる上に、翌年以降の所得からも繰り越し控除をおこなうことが可能です。
この譲渡損失の繰り越し控除には二つのケースがありますが、今回はそれぞれのケースについて具体的にご紹介します。
不動産売却後の譲渡損失繰り越し控除!買い替え時に活用できる特例
二つのケースのうち、一つ目は自分の暮らす住まいを買い替える場合の特例「マイホームを買換えする場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」です。
この特例をうけるにあたっては売却する物件、新しく買い替える物件それぞれに、次のような条件が求められます。
売却する物件に求められる条件
●新しい所有者の居住用として譲渡をおこなう
●敷地面積が500㎡以内であること
●売却年1月1日時点で5年以上の所有期間を有すること
●2021年12月31日までに譲渡をおこなう
買い替える新居に求められる条件
●床面積が50㎡以上であること
●物件を売却した年の、前年1月1日~翌年12月31日までの間に取得すること
●取得年の翌年12月31日までに入居もしくは入居見込みがあること
●住宅ローンを活用しており、繰り越し控除を受ける年末にローン残高があること
●借入先が親族以外であること
不動産売却後の譲渡損失繰り越し控除!買い替えなしで活用できる特例
残りのもう一つは、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といい、買い替えでなくても活用が可能です。
この特例を利用する場合にも、買い替えありでの特例を活用する場合とおおむね同様の条件を満たしていることが求められます。
大きく異なる条件として、次のようなものが挙げられます。
●買い替えをおこなう必要はなく、物件を譲渡したあとは賃貸への入居や実家への転居などが可能
●譲渡をおこなう前日に住宅ローンの残高が存在すること
●住宅ローンの残高が売却価格を上回っていること
ただし、翌年度以降に繰り越すことのできる金額は、住宅ローンの残高から物件の売却価格を引いた額を限度とすることが定められています。
さらに、その年に3000万円を超える合計所得がある場合は控除が受けられないため、注意が必要です。