「親が認知症で介護施設に入所することになり、その費用を捻出するために親所有の不動産を売却したい」。
超高齢化が進む昨今では、このようなケースが増え続けています。
しかし、たとえ親が認知症だからといって、親の不動産を勝手に売却することはできません。
そこで今回は、認知症の親が所有している不動産を売却する方法や、売却の際の注意点についてご紹介していきます。
親が認知症に!親名義の不動産を売却する方法とは
たとえ身体が健康であっても、認知症などで「意思能力」がないと判断される場合、その本人が不動産を売却することはできません。
意志能力の有無は医師や司法書士などが同席して判断することとなりますが、「意思能力がない」と判断された場合には、「成年後見制度」という方法を活用することになります。
成年後見制度とは、認知症などを理由に判断能力がない人に代わり、選定された成年後見人が各種契約や財産管理などをおこなえるというもの。
成年後見人を最終決定するのは家庭裁判所ですが、申し立て時に親族(子ども)や弁護士などを「候補者」として提出することができます。
申し立ての際、家庭裁判所側が「医師による意志能力の鑑定が必要」と判断した場合、鑑定料として5万円から10万円ほど必要になる場合があるので注意してください。
また、申し立てから選任されるまでにはおよそ1か月から2か月ほど時間がかかります。
申し立てに必要な書類は、「申立書」「申立事情説明書」「親族関係図」「財産目録とその関連資料」や、「戸籍謄本」「住民票」などです。
用意する書類の数が多く、また取り寄せ先も裁判所、各自治体、法務局などさまざまなので、事前に必要書類をきちんと把握してから効率よく手配を進めましょう。
成年後見人に選定されたあとは、本人に代わって不動産会社との媒介契約や買主との売買契約を結ぶことになります。
認知症になった親の不動産を売却する際の注意点
成年後見人として認知症の親の不動産を売却する際には、いくつか注意点があります。
まず、売却するのが居住用不動産だった場合、売却前に家庭裁判所の許可がいるということ。
不動産は本人にとって重要な財産なので、売却が本人の不利益にならないか判断するためです。
また、その不動産の相続予定人がいるのであれば、売却前にきちんと話をしておきましょう。
法律的には相続人の合意を得ておく必要はありませんが、「親の死後に遺産をめぐって兄弟トラブルになった」という事態にも発展しかねません。
そのようなリスクを避けるためにも、売却の際には慎重な姿勢で手配を進めましょう。